書評

天才たちを束ねた男、織田信長 【書評】『天下城』

天下城〈上〉 (新潮文庫) 

モザンビークは雨季に入りそうで、暑い日々が続いています。

現地で扇風機を買ったら、全く同じ商品が他店で3分の1の価格で売られていました・・ ショック。

日本の『価格.com』みたいなサービスはないので、損したくない場合は自力で調査する必要があります。

 

さて、今回は『天下城』という本を紹介します。

 

  

1. 天下城の主人公『戸波一朗太』

この本の主人公は、石積み職人である戸波一朗太

少年時代に武田軍の捕虜になり、奴隷として売られてしまう。それが彼の人生の始まりだった。

 

金山で奴隷生活数年→脱走→牢人の家来→兵法者の従者→石積み職人

という人生を歩んだ一朗太。彼が生涯抱いていた想いは、「絶対に落ちることのない城を築く」というもの。

石積み職人として技術を磨いていった彼は、いつしか大名たちから引っ張りだことなる。

「あいつに石垣を作られると、城が落としにくい」

そんな中、ある日信長の目に留まり、いくつか信長に命じられて城造りに携わる。

最終的に命じられた仕事が、あの有名な安土城の建設だ。

 

2. 天才を結集し、日本に無かった物を作り出した男「織田信長」

この本を読んで気づいたこと、それは

 

今まで読んできた本の主人公が、みんな信長の下にいる

ということ。

 

たとえば、天才絵師の狩野永徳

以前ブログで紹介した『花鳥の夢』の主人公。安土城の屏風の絵などを、信長の命で描いた。教科書で紹介されるほどの有名人。

 
 そして、 大工の岡部又右衛門。映画化もされた小説『火天の城』の主人公。
 
つまり、その道のプロが集って完成したのが、あの安土城だった。
人生が1冊の本になるような彼らが、信長の下に一堂に会し、己の最高傑作を求めて安土城建設に関わった。
 
過去に無いものを求めた信長だったからこそ、戸波一朗太、狩野永徳、岡部又右衛門らの力を限界以上に引き出せたのだろう。
とてつもなく大きな器じゃないと、天才たちを受け止められないよなぁ。そう考えると、信長の凄さを思い知る。

3. この本の見どころ 『天下城』は上下巻に分かれている。 前半は、一朗太の少年〜青年時代。後半は信長からの仕事に打ち込む一朗太が描かれている。
 この本の見どころは、主人公以外の登場人物にある。信長を含め、主人公以外の登場人物に関して、必要以上の情報は書かれていない。それでいて、前半に出てきた人物がラストにちょこっと出てきて、主人公の考えの核心に迫る役割を果たしたりする。 多くを語らず脇役を映えさせる、それが見事な本だった。筆者の佐々木譲さんの本を読むのは、今回が初めて。他の本も読んでみるか。

最終的に戸波一朗太が、自分の目指す天下城を作れたか? 

それは本書を読んで確認していただきたい。
本当は年末年始にじっくり読むつもりだったけど、面白かったので読み進めてしまいました。

 

今回は以上です!

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